「怒る」と「叱る」:心理士が解説する、子育てで使い分ける感情とルールの伝え方
- オペラント 合同会社
- 6月15日
- 読了時間: 4分
更新日:6月18日
「怒るのは良くないって聞くけど、じゃあどうしたら?」
「怒る」と「叱る」。どちらもこどもに何かを伝えようとする行動ですが、この二つの違いを意識していますか?
「怒るのは感情的だから良くない」「冷静に叱るべきだ」といったアドバイスを耳にすることもあるかもしれません。しかし、私は「怒る」と「叱る」は、それぞれ異なる役割を持ち、どちらが良い・悪いというものではなく、目的や状況に応じて使い分けることが大切だと考えています。
この二つの違いを明確に理解することで、こどもへのメッセージがより効果的に届き、あなたの心の負担も軽くなるはずです。

「怒る」とは?感情をこめた「ケンカ」
あなたがこどもに対して怒る時、それはあなた自身の感情を伴った、人間的なコミュニケーションです。
怒るときは対等に、こどもに感情的な姿を見せましょう。自身の感情を言葉にして伝えてあげてください。
当然、こどもからも反論があるでしょう。手を出さない範囲で、互いに正直な気持ちをぶつけあってください。
一言でまとめると、「怒る」とは、ケンカをすることです。
○カードゲームでズルをした場面
「あ、ずるい!じゃあ私もやっちゃおーっと」
○親の都合で急いでいる時に準備をしてくれない場面
「急いでいるのに、準備してくれないと困るって。お助けしてよ」
○好き嫌いをする場面
「せっかく作ったんだから食べてよ!」
怒りは、親もこどもも感情を持つ人間であり、互いに影響し合っていることをこどもが学ぶ大切な機会にもなります。
「叱る」とは?冷静な「しつけ」
一方で、こどもを叱る時、それはしつけの一環として、ルールや社会の規範を冷静に伝えるコミュニケーションです。
努めて冷静に、絶対的なルールを伝えます。親の好みではなく、社会の規範を伝えるので、そこに反論の余地はないはずです。
○道で走り出した場面
「ここは危ないから、手をつないで歩こうね」
○ともだちを叩いた場面
「それはだめ。叩いたら痛いよ。何があった?」
○店の商品に手を伸ばした場面
「落ちたら壊れちゃうから触らないでね」
怒る例と比べると、ずいぶん冷静になっていますね。絶対的なルールは、毅然とした態度で伝えましょう。

「怒る」と「叱る」を混ぜると親も子もしんどくなる
ここで、何がタブーかが浮かび上がってきますね。
怒るときに叱る要素を入れることと、𠮟るときに怒り感情を持つことです。
すなわち、ケンカの中で相手の反論を認めないことと、しつけの際に怒り感情を入れてしまうことです。
怒るときに叱る要素を入れると
○カードゲームでズルをした場面
「それはだめです、やり直そう」
○店の商品に手を伸ばした場面
「何してんの!壊れるでしょ!」
「怒る」と「叱る」の使い分け
では、「怒る」と「叱る」を具体的にどのように使い分ければ良いのでしょうか。
私が考える理想的な使い分けは、「自傷・他害・器物損壊」といった、こども自身や他者の安全、または財産に関わることについては、「叱る」。それ以外の、日常的なこどもの行動や感情のすれ違いについては、「怒る(感情を伝える)」で十分だということです。
危険な行為や社会のルールを逸脱する行為には、親が毅然とした態度で「これはやってはいけないことだ」と冷静に教える必要があります。そこでは、こどもの言い分を長く聞くよりも、まず行動を制止し、ルールを明確に伝えることが優先されます。
一方で、日常のちょっとしたすれ違いや、親自身の感情が動かされた場面では、我慢せずに自分の気持ちをこどもに伝える「怒る」という行動も、とても大切です。それは、親が人間であることを示し、こどもが他者の感情を学び、共感性を育む機会にもなります。
使い分けの基準は、親がラクであること
「怒る」と「叱る」を混ぜてさえいなければ、怒る例の時に叱っても構わないと考えています。しかし、「叱る」ことが多くなると、親も子もしんどくなってくることと思います。
絶対に守ってほしい最低のラインだけ親が決めて叱って、あとはこどもの意見を取り入れながら、各家庭の方針を定めていくとよいのではないでしょうか。
もちろん、怒ったあとには仲直りも忘れずにしてくださいね。




コメント